上田会計週報『変わる基礎控除とその歴史』2018.06.04

平成32年分所得税から適用される改正

平成30年の税制改正によって、これまでは一律1人38万円とされていた所得税の基礎控除が、合計所得金額が2,400万円以下の人は48万円に引き上げられます。
2,400万円超~2,500万円以下の人は基礎控除が段階的に減額され、2,500万円を超える人は基礎控除がゼロになります。

合計所得金額 所得税の基礎控除の額
2,400万超~2,450万円 32万円
2,450万超~2,500万円 16万円
2,500万円超 適用されません

 

設立趣旨は生存権の保護だった?

基礎控除は1947年(昭和22年)に創設されました。「納税者本人や納税者の配偶者、扶養親族の最低限の生活を維持するために必要な収入を守る」という趣旨があったとされています。過去には頻繁に金額を変更した事もありましたが、年間生活費を計算した際の献立・生活があまりにもお粗末だった事もあり、顰蹙を買う事も多かったようです。
なお、「平成29年4月1日現在法令等」と前書きがある国税庁の説明では趣旨には一切触れてはおりませんが、簡素に「基礎控除は、ほかの所得控除のように一定の要件に該当する場合に控除するというものではなく、一律に適用されます」となって、設立趣旨には沿っています。これが今回の改正で崩れる事になります。

多様な働き方に対応した改正と言うが

今回の改正の趣旨には「働き方の多様化を踏まえ、働き方改革を後押しする観点」と明示されています。
諸外国の水準と比べ過大となっている給与所得控除と、公的年金等控除からは共に10万円ずつ控除が低くなる改正を併せて行う他、子育て世帯等には「調整控除」を入れる事によって負担が増えないような改正も行われます。結果、一般的な年収のサラリーマン世帯には一連の改正によって税の増減は発生しない事になります。
ただ、当初の設立趣旨であった、憲法で定められている生存権への税制からのアプローチである人的控除、その根幹であった基礎控除を無くすと言うのはいかがなものかと思われます。

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