ミネルバ会計週報『令和2年4月より改正民法施行請負人の「契約不適合責任」』2020.6.29
「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へ
令和2年4月1日より改正民法が施行されました。多岐にわたり、いろいろな改正が入っていますが、請負契約の「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変わることにも注目されています。この改正により売主の責任が増すことになります。
改正前の請負契約の「瑕疵担保責任」とは
改正前の民法の「瑕疵担保責任」を復習してみましょう。「瑕疵(かし)」とは「玉に瑕(キズ)」のキズ(欠陥)のこと。土地・建物などの「特定物」の欠陥などは、引き渡されても、すぐにはわからないものがあります。これを「隠れた瑕疵」といいます。
旧民法では、引き渡した物件に「隠れた瑕疵」がある場合は、売主は瑕疵担保責任を負うものとされていました。
(瑕疵担保責任の内容)無過失責任
①原則:損害賠償
②例外:契約目的を達しない場合に限り契約解除可(建物は不可)
たとえ瑕疵がある土地・建物の引き渡しても、債務(引渡)は履行しているので「債務不履行責任」は問えないと考え、代わりに「瑕疵担保責任」が法定されたわけです。
改正後は売買の「契約不適合責任」準用へ
今回の改正で、請負契約に売買契約の「契約不適合責任」が準用されることとなり、「瑕疵担保責任」規定は削除されました。
(請負契約の改正のポイント)
【改正前】 | 【改正後】 | |
修理・代替物の請求 | 修理は○ | ○ |
損害賠償請求 | ○ | ○ |
契約解除(代金返還) | ○(建物は×) | ○ |
代金減額請求 | × | ○ |
① 改正後は「契約に適合しない」という「債務不履行責任」として取り扱われ、契約不適合には「隠れた」という前提は不要となりました。
② 改正前は建物の請負契約は契約解除ができませんでしたが、改正後は建物の解除制限がなくなりました。
③ 責任追及には「引渡しから1年以内(建物は5又は10年)」の請求が必要でしたが、改正後は、契約不適合を知ってから1年以内の通知で足りるとされました。
④ 「不適合発見から5年後」という新しい時効が追加されました