ミネルバ会計週報『配偶者居住権は譲渡性資産か』2020.7.6

配偶者居住権への昨年の税制措置

平成30年の民法改正で創設され本年4月1日から制度がスタートしている配偶者居住権等については、その権利設定期間中の権利放棄や合意解除は可能と解されるものの、民法では、終身性の一身専属権ゆえ「配偶者居住権は、譲渡することができない」と規定されています。
昨年の税制改正で相続税法に配偶者居住権等の評価規定が定められ、その上で、配偶者居住権等消滅に当たり対価がなければ、贈与課税の対象となる、と通達で明らかにされているところです。

 

配偶者居住権消滅の場合の譲渡所得

本年改正では、収用や権利消滅で補償金や権利消滅の対価を受け取り、その結果、配偶者居住権等が消滅するときは、譲渡所得の計算をすることになりました。
収用による配偶者居住権等の権利消滅の直接の相手は収用機関で、権利消滅の対価は譲渡収入とみなすとのみなし譲渡の規定になっています。
また、収用に限らず、配偶者居住権等の権利消滅一般の場合の規定も作られ、自動的に譲渡所得の計算をするとされ、こちらについてはみなし譲渡の文言はありません。

 

改正税法と民法規定との関係

みなし譲渡なら、民法の譲渡不可の規定と矛盾しないかもしれませんが、対価のある配偶者居住権の権利消滅につき無条件に譲渡所得計算をする、ということになると、配偶者居住権を譲渡性資産と認定するに等しく、民法との矛盾は明確です。
その上、収用では、借地権の場合と同じく、配偶者居住権者と所有者の両方が譲渡当事者となることを前提としていますが、税法は、収用以外の譲渡一般でも、そのようなケースが生じることを想定しているのかもしれません。

 

譲渡課税が当然との体制整備は未だ?

収用による権利消滅が譲渡で、土地建物所有者との合意や放棄による権利消滅も譲渡で、その他収用類似の権利消滅もみな譲渡だとすると、配偶者居住権は自ずと居住用の財産と認識されますので、居住用財産の3000万円控除、軽減税率、買換え特例の適用などについての手当が必要になってくるように思われます。
これらについて法改正を今年の4月1日以後に向けて何故に用意してないのか、不思議です。

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