ミネルバ会計週報『インボイスがもたらす 転嫁妨害や黙認』2021.11.15

免税事業者の消費税転嫁の権利

消費税法を素直に読むと、事業を行う者には、取引で受取った消費税を納める義務が課せられており、ただし、年1000万円以下の課税売上しかない者については、その消費税の納税義務が免除される、と書かれていることを確認することが出来ます。すなわち、免税事業者といえども、消費税を請求して受取る権利があるのです。
消費税の転嫁拒否を監視する転嫁Gメンの根拠法である消費税転嫁対策特別措置法のガイドラインにおいては、免税事業者であることを理由にした消費税転嫁を制限する買い叩きをしてはならない、とされていました。課税事業者のみならず、免税事業者にも、消費税を転嫁請求する権利があることが、ここでも確認できます。

インボイス制度では

ンボイス制度では
令和5年10月1日から、適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が新たに始まるわけですが、ここで、事業者の消費税転嫁請求権に変容が起きたわけではありません。変容は、事業者の取引相手に於いてであって、その取引で適格請求書を受領していない限り原理的には仕入税額控除が出来ないことになった、ということにすぎません。
しかし、免税事業者は、インボイス番号を取得することが出来ません。インボイス番号を持たない事業者から受取る請求書等は、適格請求書ではないので、その受取人においては、原理的には仕入税額控除が出来ません。ただし、経過措置として、制度開始後3年間は80%控除可能、次の3年間は50%控除可能と、されています。

インボイス制度での弱者用新税率

そうすると心配なのは、当初3年間においては、転嫁消費税は8%にしてくれ、次の3年間では、5%にしてくれ、その後は、消費税転嫁は控えて欲しい、という要請が跋扈しそうな気がします。こんな時こそ転嫁Gメンの活躍を期待したいところですが、都合よく消費税転嫁対策特措法は、今年3月31日をもって、失効となっています。
消費税法の建付けからは、事業者が課税取引をしたら、その取引額の中の110分の10は消費税のはずなのですが、当局には、この大前提を維持しようとする姿勢はなさそうです。買いたたきに遭いたくなければ、免税事業者も選択課税事業者となりインボイス番号を取得せよ、との姿勢です。

新着情報

ミネルバ会計週報『65歳超雇用推進助成金 高年齢者無期雇用転換コース』...
ミネルバ会計週報『海外転勤=国外転出届で変わる-税金・健康保険・年金』...
ミネルバ会計週報『トラック運転者の 改善基準告示とは』2023.09....
ミネルバ会計週報『永年勤続表彰金の 社保・労保・課税上の取扱い』202...
ミネルバ会計週報『数次相続の税額控除』2023.08.28
ミネルバ会計週報『災害に遭った時 災害見舞金と税金』2023.08.1...
ミネルバ会計週報『国税庁が注意喚起 TOBで上場廃止株の申告漏れ』20...
ミネルバ会計週報『トランスジェンダー公務員の トイレ使用制限は無効!』...
ミネルバ会計週報『エンジェル税制 住民税の申告では要注意』2023.0...
『ミネルバ会計週報「エンジェル税制の改正」2023.07.18』

お問い合せバナー(お電話からのご相談は0120-944-567)