『ミネルバ会計週報「エンジェル税制の改正」2023.07.18』

エンジェル税制とは

 エンジェル税制とは、スタートアップ企業へ投資を行った個人投資家に対しての税制上の優遇措置です。所得税の計算上、(対象企業への投資額-2,000円)がその年の給与等の総所得金額から控除(総所得×40%か800万円のいずれか低い方が上限)される優遇措置Aと、対象企業への投資額全額がその年の株式譲渡益から控除される優遇措置Bの選択適用となります。
 令和5年3月31日までのエンジェル税制は利益が出た場合「課税の繰延」をするに留まっており、若い企業に投資を行うリスクにチャレンジした見返りが少ないものでした。

繰延から非課税へ一部改正

 改正前のエンジェル税制は「課税の繰延」の扱いとなっており、たとえば他の株式譲渡益が5,000万円ある年にエンジェル税制対象企業に5,000万円の投資を行って優遇措置Bを選択、売却時には1億円となったとして見てみると、
【投資時】
他株式譲渡益5,000万円-エンジェル税制適用5,000万円=課税所得0円
【売却時】
エンジェル適用株式譲渡益1億円-取得費0円(課税の繰延)=課税所得1億円
といった具合に、売却時には先に控除を受けていた結果、取得価格は0円として考えなければなりませんでした。
 令和5年度税制改正によって、設立5年未満の株式会社で各事業年度の営業損益金額が0未満等の条件を満たすプレシード・シード期のスタートアップ企業に投資する場合や自己資金による起業時に限られますが、20億円までの出資であれば優遇措置Bは繰延ではなく非課税となりました。先ほどの例示で見てみると、
【投資時】
他株式譲渡益5,000万円-エンジェル税制適用5,000万円=課税所得0円
【売却時】
エンジェル適用株式譲渡益1億円-取得費5,000万円=課税所得5,000万円
といった具合です。
 ちなみに売却時点で損失が出た場合は、改正前・後のいずれも、他の株式譲渡益と通算や、損失の繰越はできますが、投資年に優遇措置を受けていた分については控除対象になりません。

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