歯科医院の医療法人成りの注意点
医療法人化とは、医療法に定められた医療法人を設立することを言います。
今から医療法人を設立する場合は、持ち分なし医療法人しか設立することができません。
持ち分なし医療法人とは、簡潔に言うと出資者が財産権を持たない医療法人のことになります。
そのため医療法人を清算する場合、残余財産は国庫に帰属することになります。
また、医療法人の手続きには、自治体によって決められたスケジュールがあるため、予め自治体に確認する必要がございます。
ここからは、医療法人化の特有の注意点を5つお話させていただきます。
1. 個人借入の引継
個人事業時運転資金を借り入れていた場合、現物出資扱いとなり、債務超過の部分は引き継ぐことができません。それ以外の部分を引き継ぐ際には、借入先金融機関の同意が必要となります。
個人で返済していく場合は、返済分を考慮したうえで給与の設定を行う必要があります。
2. 人的要件の配置
法人化すると社員が理事決定権を持ち、社員総会で社員1人1議決権を持つため、場合によっては法人を設立した自身が理事に任命されない場合もあります。第三者の社員を多く配置してしまうと、任命されない場合が起こることを念頭に、採用や人員配置を行うことが必要となります。
また、監事は親族などに近しい人を配置することは禁じられており、第三者に委ねる必要があります。信頼できる医師や歯科医師、税理士に頼むケースが多い様です。
3. 配当・利益分配の禁止
医療法で「剰余金の配当をしてはならない」と定められているため、利益の分配とみなされる行為は禁止されています。
4. 毎年の決算申告後に純資産の登記を管轄法務局へ提出が必要
【資産の総額の変更登記】を事業年度終了後3ヶ月以内に提出が必要となっています。添付書類は、財産目録または貸借対照表となります。
5. 毎年の決算申告後に事業報告書と経営情報を都道府県に報告が必要
毎会計年度終了後3ヶ月以内に上記の書類を作成し、理事会・社員総会で承認を受けて都道府県に報告が義務付けられております。
その他の注意点に関しては、一般の法人化と同様となります。
例)設立時、事務処理等の手続きの煩雑化、社会保険の強制加入、
法人と個人は別人格のため法人の財産を好きに使うことはできなくなる、など
以上のように様々注意点がございますので、ご自身で上記の注意点を踏まえ行っていくまたは専門家と連携しながら行っていくことが必要となります。