ミネルバ会計週報『配属・配転について』2024.02.05

配属に対する不安が造語になった

「配属ガチャ」という言葉が有名になりました。入社した会社で配属先を選べず、どこに配属されるかわからない不安から生じた言葉だそうです。そこで今回は配属や配転について労働法ではどのようになっているか見てみたいと思います。

配転命令等の根拠

配置転換(労働契約における職務内容の変更)と転勤(同じく勤務地の変更)を合わせて「配転」と言います。これを広く解釈すれば、入社時における最初の労働契約上の職務内容(配属)を含むことができるでしょう。通常、労働者が正社員として採用された場合には、原則として、どの場所で働くか(就業の場所)、どのような仕事をするか(職種)などの限定がない労働契約が締結されたと解されることから、会社には、就業場所や職種を決める権限が与えられていると解することができます。また、こうした会社の権限は、通常、就業規則に「業務上の必要性がある場合には配転を命じることがある」というような記載がされているのが一般的です。なお、配転が自社の制度として実施されている場合には、就業規則にその旨を記載することが義務付けられています(労働基準法第89条10号)。
では、就業規則の作成が義務付けられていない10人未満の会社など、就業規則のない会社の場合は、どのような根拠に基づいて配転命令を行うのでしょうか。その場合には、個々の労働契約において、どのような合意がなされているかの問題になります(契約説)。裁判例では、就業規則がない場合でも、「労働契約の締結の経緯・内容や人事異動の実情等に照らして、当該労働契約が客観的に予定する配転命令権の有無及び内容を決すべきであり」としています(京都地裁平成23年9月5日)。

会社が注意すべきこと

このように、配転命令については就業規則への記載や、個別の労働契約の内容とすることにより、会社の権利として認められています。そのため逆に言えば、就業規則や個別の労働契約に配転命令に関する記載がない場合には、会社が発した配転命令が無効となる可能性もありますし、当然に特定の労働者に対する報復的な配転命令である場合には権利の濫用として無効とされることが考えられます。

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