ミネルバ会計週報『特定居住用財産の譲渡損失の 損益通算及び繰越控除の特例』2024.07.01
買換え特例と似ているが異なる
住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る価額で売却して、譲渡損失が出た場合、一定の要件を満たすものであれば、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から損益通算することができます。さらに損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年間繰越控除することができます。これらの特例を、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と言います。
「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と比べてみると、損益通算や繰越控除の内容は同じですが、「特定」の特例は、買換えが要件には入っていません。また「買換え」の特例は売却した居住用財産の譲渡損失全ての損益通算・繰越控除が可能でしたが、「特定」の特例については損失額全てというわけではないのが大きな差異です。
なお、譲渡した年の前年以前3年以内に「買換え」の特例および「特定」の特例を利用していた場合は適用できません。また、前年および前々年に他のマイホームの売却特例を利用した場合にも適用できません。
どこまで損益通算や繰越控除ができる?
特定居住用財産の特例の譲渡損失の損益通算限度額は、①売却した居住用財産の損失額か②売買契約日の前日の住宅ローン残高から売却額を引いた残額のいずれか小さい金額となります。
例:購入代金5,000万円、住宅借入金4,000万円、売却代金1,000万円、借入金残高2,000万円の場合
①の損失額は5,000万円-1,000万円=4,000万円、②のローン残高から売却額を引いた額は2,000万円-1,000万円=1,000万円となりますから、この場合適用できる損益通算限度額は1,000万円となります。
住宅ローン控除は併用可能だが
この特例を利用した場合でも、新たに住宅ローン控除を受けることは可能ですが、新たな住宅ローン控除、ということはマイホームを買換えているわけですから、上記の例示の状態でしたら、4,000万円を損益通算や繰越控除できる「買換え」の特例を利用した方が有利になります。