医師・歯科医師が適用できる概算経費とは?知っておきたい基礎知識と活用方法

確定申告の準備を進める中で、「概算経費」という言葉を目にしたことがある方もいるのではないでしょうか。
今回のブログでは、概算経費について解説します。

1.概算経費とは

概算経費とは、実際の経費を計算する代わりに、収入金額に一定の割合を乗じて経費を算出する制度です。
収入が一定金額以下の診療所については、実際に支出した「実額経費」と一定の方法により計算した「概算経費」のうち、いずれか金額の大きい方を経費とすることが認められています。

2.概算経費のメリット・デメリット

概算経費のメリット・デメリットは、以下の通りです。

【メリット】

・節税効果:
実際の経費よりも概算経費の方が高くなる場合、所得金額を抑え、節税効果が期待できます。

【デメリット】

・自由診療の経費は別途計算が必要:
概算経費は社会保険診療報酬にのみ適用されるため、自由診療の経費は別途計算が必要です。
自由診療の割合が高い場合、経費計算が複雑になる可能性があります。

3.適用条件

概算経費が適用できるのは、以下の条件をすべて満たす医師・歯科医師です。
・社会保険診療報酬が年間5,000万円以下
・総収入金額(※1)の合計額が7,000万円以下
・所得税法上の「事業所得」として確定申告を行っていること

(※1)・・・「総収入金額」に以下の金額は含まれませんので、除外して判定します。
      ①国庫補助金、償還金、保険金その他これらに準ずるものの収入金額
      ②固定資産又は有価証券の譲渡に係る収益の額
      ③受取配当金、受取利子、営業外収益の額
      ④貸与寝具、貸与テレビ、洗濯代等の収入金額
      ⑤医薬品の仕入れ割戻しの金額
      ⑥電話使用料、自動販売機等の手数料に係る収入金額
      ⑦マスク、歯ブラシ等の物品販売収入の額

4.注意点

概算経費を適用する際には、以下の点に注意が必要です。

・適用条件の確認:自身の収入が適用条件を満たしているか確認しましょう。
・実際の経費との比較:概算経費と実際の経費を比較し、有利な方を選択しましょう。
・自由診療の収入がある場合:自由診療に係る経費は、実額で計算をする必要がある。

5.専従者給与との関連性

青色申告の場合、家族に支払う給与は、届出を提出することで専従者給与として必要経費に算入できます。
ただし、概算経費率を用いたほうが有利となる場合がありますので、十分な検討が必要です。
また、一度支払った専従者給与(源泉所得税を納付済)は、後から概算経費の方が有利だと分かっても、取り消すことはできません。
専従者給与にかかる所得税や住民税の金額も考慮した上で、必要経費への算入を検討する必要があります。

6.まとめ

概算経費は、医師・歯科医師の節税につながる有効な制度です。
しかし、適用条件や計算方法を正しく理解し、自身の状況に合わせて適切に利用することが重要です。

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