歯科医院を“一人で開業”する?採用難・高コスト時代のワンオペ歯科開業とは

ワンオペ歯科開業

東京都品川区五反田で創業33年を迎えた歯科業界特化の税理士法人の歯科税理士東京Smile(ミネルバ税理士法人)です。現在120件を超える歯科医院のお客様をサポートしています。

「歯科衛生士の求人を出しても応募が来ない…」そんな声を、ここ数年で本当に多く耳にするようになりました。 衛生士どころか、歯科助手すらなかなか集まらない。人材紹介会社を頼ろうとすれば1人あたり何十万円もの紹介料が発生し、採用しても辞められたら元も子もありません。

採用上の競争に勝つために給与を上げ、福利厚生を充実するのは良いですが、人件費が大きくなれば、それだけ経営の負担は大きくなります。

そのうえ、開業すれば当然「経営者」として人のマネジメントや数字にも向き合う必要が出てきます。今まで診療に専念していた先生が、いきなりスタッフ教育・管理や経営判断を迫られる。私たちが税務・会計のご支援をさせていただく中で、それらを負担に感じる先生が多いと実感しています。

そこで今、増えてきているのが一人で歯科開業する一人開業、いわゆる歯科のワンオペ開業です。

なぜ歯科医院の「人材採用」がここまで厳しいのか?

歯科のワンオペ開業のお話の前に、データで歯科業界の置かれる採用環境について整理しておきたいと思います。

歯科衛生士の求人倍率は全国平均で10倍を超える地域もあり、都市部でも地方でも採用難は深刻です。

出典:令和5年歯科衛生士教育に関する現場調査の結果報告

 

この資料を見ると歯科衛生士の教育機関の卒業生の人数に対して、求人人数の方が圧倒的に多く、有効求人倍率として計算すると実に20倍となっています。それだけ歯科衛生士の採用が難しいことが伺えます。

求人媒体に出しても反応がない。かといって人材紹介会社を使えば高額な紹介料がかかる。採用しても待遇・条件で他院に流れてしまうなど、「採用→定着」が極めて難しい時代といえるかもしれません。さらに、マネジメントの経験がない歯科医院の先生にとって、「人を雇って回す経営」は想像以上のハードルです。

さらに応募を確保するために、歯科業界では給与を上げるなど待遇・福利厚生の充実を検討するところが増えているようです。

出典:令和2年歯科衛生士勤務実態の報告書

この資料を見てわかる通り、たとえば常勤の歯科衛生士の回答者の半数以上の職場に退職金手当があり、今まで無かった住宅手当をもらう衛生士が増加していたりと歯科医院側も衛生士確保のためのさまざまな打ち手をしていることが伺えます。

ただし、それだけ人にかけるコストが増えるということは売上もその分大きくならないと利益を圧迫してしまうということになります。

そこで注目され始めたのが歯科衛生士の採用も必要なく、スタッフの管理の必要もない歯科医院のワンオペ開業(一人開業)なのです。

注目される「一人で開業する歯科医院(ワンオペ開業)」とは?

歯科のワンオペ開業とは何か?

このような状況の中で、注目されているのが「ワンオペ開業」というスタイル。正式な名称が定着しているわけではありませんが、私たちは「歯科医院の一人開業」と呼ぶこともあります。

特徴は、スタッフゼロまたは最小限で、自分一人で受付・診療・経理までこなすというもの。 完全予約制で、ユニットも12台。小規模物件や居抜き物件を使って開業するのが一般的です。

歯科のワンオペ開業のメリット

◎人件費・採用費がゼロまたは非常に少なくて済む→利益率が高い

◎マネジメントのストレスがない→人間関係に悩まない

◎診療に集中できる→診療の質や患者満足度が向上

◎開業資金が抑えられる→居抜き活用で少額での開業も可能(居抜き開業は約1千万円あれば可能)

 

ワンオペ歯科開業(一人歯科開業)デメリット

 

△体力的な負担→診療・事務をすべてこなす必要がある

△休みにくい→定休日の設定や将来的な人員追加で対応可

△孤独感やすべての管理責任→税務・会計・融資など外部パートナーと組むことでカバー可能

 

一人で開業して軌道に乗った歯科開業の事例

弊事務所顧問先の事例を見てみましょう。

都内、好立地で一人開業した鈴木先生(仮名)の例

鈴木先生(仮名)は、保険診療・自費診療に関係なく「患者と納得して治療を進めたい」という思いから、あえて一人での開業を選択。都内で駅徒歩2分の物件に、高額な最新設備を導入したことで、開業資金は約6000万円(融資)となりました。

診療スタイルは完全予約制で、患者とのコミュニケーションを重視。開業後3ヵ月で損益分岐点である月売上160万円を突破しました。

たくさんの人数を診て売上を最大化する考えではなく、本来やりたかった一人ひとりの患者と時間をかけて丁寧に対応することを診療方針に掲げているため、患者の満足度が高く、クレームがほとんどないとのことです。信頼され、紹介やリピートによって売上は安定的に伸びているとのことでした。

今では月売上250万円を超えており、パートの受付スタッフを1名加えて診療に集中できる体制を築いています。今後はワンオペ歯科から脱却して、歯科衛生士を雇うために動き始めたということです。ただし、他院と違うのは今すぐ歯科衛生士を雇わないといけないという切迫した状況ではないということです。

現在、一人で運営できている状態なのでじっくり探す余裕があり、スタッフの人間性や院長の考えや方向性に合った人を採用すればマネジメントもうまくいく可能性が高くなるのではないかと思います。

歯科衛生士が採用できれば、口管強を取得して訪問に力を入れるなど、新しい経営上の選択肢も増えてくるので今後が楽しみです。

口管強について紹介した動画はこちら

‣ 口管強の活用

 

開業から10年以上、奥様と二人三脚でワンオペ歯科経営

一方で、別の田中先生(仮名)は地方都市で10年以上前に開業。歯科衛生士を雇わずに奥様と一緒に院を切り盛りしてきました。

売上は約150万円前後で安定しており、一見すると少ないように見えますが家賃をはじめとした経費が少なく、人件費も奥様に専従者給与を支払う程度ですので利益でみると生活にはまったく困らない状態で経営ができているとのことでした。

もし、家のローンや子どもの教育費があれば、この売上では足りないかもしれませんが、夫婦二人が生活するには問題ない利益は確保できているとのことです。地域に根差した歯科医院として、事業や売上の急激な拡大は考えておらず、院長の体力と相談しながら手の届く範囲の患者に丁寧な診療を提供するという考えで経営をしているようです。

歯科医院の個人経営は、一定の年齢を過ぎるとどうしても体力の衰えを感じやすいと聞いたことがあります。自分の年齢に応じて、ワンオペ歯科に方向転換することも、一つの戦略であるかもしれないと考えさせられた事案でした。

ワンオペ開業の経営のカギは“売上”ではなく“利益”

ワンオペ歯科で重要なのは、売上の額よりも利益です。

開業費を抑え、固定費が少ないぶん、売上が少なくても利益が出るケースがあります。 たとえば、ユニット1台・居抜き物件・一人運営というスタイルなら、開業費用は抑えられ、月の家賃や人件費も最小限にできます。

また、保険診療の年間売上が5,000万円以下であれば、特例(特措法)による概算経費の適用も可能です。実際に使った経費に関係なく、一定の割合で経費を計上できるため、税金面で有利になる可能性があるのです。

ちなみにミネルバ税理士法人では実際に税金の申告をする際、通常の経費で算出する場合と、概算経費で算出する場合とどちらが有利になるのか検討した上で対応しております。

このように、経費を抑えてキャッシュをしっかり残す経営がしやすいのは、ワンオペ歯科の大きな強みといえます。

さらに、利益が安定してくれば、将来的に歯科衛生士を採用したり、口腔管理体制強化加算(口管強)を取得して訪問歯科を充実させる、といった「第二フェーズ」への経営判断もしやすくなります。

「まずは一人で開業して、十分に利益を確保できる診療体制をつくる」 →「そのうえで、自分の理念に合ったスタッフや診療体制を段階的に加える」

この順序で経営を考えれば、焦って人を採用してマネジメントに苦しむことも、赤字で消耗することも避けられるのではないでしょうか。

ワンオペ開業を成功させるためにミネルバ税理士法人ができること

「すべてを自分でやる」とは言っても、会計や融資、税務、経営判断のすべてを一人で完璧にこなすのは中々難しいと思います。一人で開業する場合、自分がやらなくて良い業務は専門家にお願いするのは事業を成功させるための一つの要因ではないかと思います。

歯科に特化するミネルバ税理士法人では、下記の点でお役に立てます。

ミネルバ税理士法人の3つの強み

税務・会計の代行により先生は歯科診療に集中できる

ミネルバ税理士法人は東京都品川区で創業し33年。従業員60名規模を誇る、歯科業界に特化した税理士法人です。記帳・申告・資金繰りまで一括サポートでき、開業当初の「経営が見えない不安」について数字を通して支援し、先生が本来の診療業務に集中できる環境を整えます。

現実に沿った事業計画作成支援

ミネルバ税理士法人では、自己資金や診療方針に合わせて、融資を受けるためだけの形式的な事業計画ではなく、開業後の行動計画の指針となるような実態に即した事業計画書を丁寧に作成することができます。この数字は単なる資金調達のためのものではなく、診療単価、患者数、細かい経費などの各項目は目標設定にも活用でき、開業後の経営判断やPDCAにも役立ちます。

歯科医院の成長に合わせた提携先含めた支援

開業後の歯科医院の成長に合わせて、様々な専門家を紹介することができます。たとえば訪問歯科を強化したい先生には歯科コンサルタント、採用強化を希望する方には歯科専門の採用コンサル、医療法人化や分院展開には歯科に精通した行政書士など、フェーズに応じた適切な専門家ネットワークをご提供。このように、先生のスタイルに応じて「必要なものを、必要な時に」提案できる体制がミネルバの特徴です。

 

開業の成功条件は“自分に合うスタイル”を選ぶこと

「本当に一人で開業して大丈夫だろうか」と感じていた先生が、いまでは診療に集中し、患者との信頼関係をつくりながら、無理なく安定した経営を実現しています。

開業スタイルに正解はありませんので、大きな組織でスタッフを多数抱える歯科経営もあれば、最小限の人員で自分の理想の診療を追求するスタイルもあります。大切なのは、“自分に合ったかたち”を見つけることだと思います。

ワンオペ開業は、特に診療の質を大切にしたい歯科医師にとって、無理なく・ムダなく・理想に近づける開業の形ではないでしょうか。限られたリソースの中で、効率的に経営を成立させることができると思います。そしてなにより、診療方針や経営判断を自分自身でコントロールできるため、「理想の歯科医院」を実現しやすくなります。

はじめから大きく始める必要はありません。まずは“小さく始めて、大きく育てる”ことがミネルバ税理士法人の考える無理せず少しずつ成長するという「亀さん経営」に通じるところがあります。

その柔軟な発想こそが、これからの時代における持続可能な歯科開業の新しいかたちなのかもしれません。

 

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