節税対策

ここでは、クリニックにおいてよくある節税方法の一例をご紹介します。

クリニックにおいてよくある節税方法の一例をご紹介しますが、留意すべきなのは、事業を経営していくうえで節税がどの程度の重要性を持っているのかを一度きちんと確認するということです。節税を考えるのと同時に、ぜひ長期的な視野を持って、ご自身のクリニックの将来について考える機会を持っていただきたいと思います。歯科税理士東京スマイルでは、会計税務だけでなくお客様の経営のパートナーとして、皆様のお役に立ちたいと考えています。

お金の支出を伴わないもの

  1. 未払金、未払費用を漏れなく計上する

    経費の中には、水道料金のように、実際に使った時から1~2か月後に支払いをするものがあります。しかし、経費を費用計上できるタイミングは、支払った時ではなく、実際に使った時です。こういった経費については、きちんと未払計上をすることで、当期に発生したものを費用計上することができ、利益を圧縮することができます。同様に、給与の締日が月末でない場合は、締日から月末までの期間に対する給与を未払い計上することも可能です。

  2. 使っていない固定資産を除却する

    使っていない固定資産を廃棄することで、損失を計上することができます。また、償却資産税を減らすことにもつながります。決算日前や年末に、償却資産台帳に記載されている資産ですでに使用していないものがないか、チェックしてみましょう。

  3. 簡易課税制度を適用する

    自由診療などの課税売上高が5,000万円以下の場合は、消費税の納付額の計算方法として、簡易課税制度を選択できる可能性があります。クリニックの事業構造の場合、簡易課税制度を選択したほうが、消費税の納税額が低くなることが多いです。

    ただし、高額の資産を購入する場合などは、簡易課税制度を使わないほうが有利なこともあり、またそもそも簡易課税制度を選択できなくなることもあるなど、長期的な見通しを持って意思決定する必要があります。

  4. 概算経費の特例を適用する(返済法人も使えます)

    社会保険診療報酬が5,000万円以下で、医業売上が7,000万円以下の場合は、概算経費の特例を適用すると、実際よりも多額の経費を概算経費として計上できる可能性があります。

お金の支出を伴うもの

  1. 医療用機器を購入する

    医療保険業を営んでいる事業者が、医療用機器を購入すると、通常よりも多額の経費を計上できる可能性があります。取得価額500万円以上で指定を受けた医療用機器等を購入し、事業に使用した場合には、通常の減価償却費に加え、その取得価額の12%を早期に費用化できます。この制度を使うためには、以下の要件を満たす必要があります。

    • 青色申告書を提出している個人または法人であること
    • 医療保険業を営んでいること(MS法人が取得した賃貸用医療用機器等については、適用不可となります)
  2. HPや広告宣伝費を使う

    節税の一番の基本は、経費を前倒しで計上し、売上は後ろ倒しで計上することです。そのため、税務調査では適正なタイミングで経費や売上が計上されているか、厳しくチェックされます。この、経費を前倒し、売上は後ろ倒しを正々堂々とできるのが、広告宣伝費です。当期中に経費として支出した広告宣伝費は、将来の売上につながります。ただし、HP作成は実際に完成した日がいつになるか、に注意が必要です。

  3. 必要な消耗品等を購入する

    1個当たり30万円未満のものであれば、固定資産に計上すべきものであっても、使い始めた日に全額費用計上できます。ただし、費用計上できたとしても、実際にお金を支払っているので、無駄なものを買ってもお金はたまりません。決算日直前になって必要なものをリストアップするよりも、事前に計画を立て、本当に必要なものを購入するようにしましょう。

  4. 修繕を行う

    修繕工事は、決算日前に完了している必要がありますので、事前にどのような修繕をすべきなのか把握をしておく必要があります。また、修繕工事の全てが費用計上できるわけではありませんので、修理工事会社とも相談しながら進める必要があります。期末の修繕については、税務調査のチェックポイントでもあるので、必要書類を整理しておきましょう。

  5. 経費を年払いにする

    本来は、経費を年払いしても、翌期分は費用計上することはできません。ただ、経費の中には、地代家賃や保険料など、年払いすると支払った時に全額を費用計上することが可能なものもあります。例えば、個人事業主で、11月まで地代家賃を毎月支払い、12月から翌年の11月まで年払いにすれば、その年については23か月分の家賃を費用計上することが可能です。契約書で年払いであることが明示されている、毎期継続適用する、といった要件があります。

  6. 中小企業のための優遇税制を活用する

    経営力向上計画を事前に提出しておくことで、レセコンなどのソフトウェア(取得価格70万円以上のもので一定の要件を満たすもの)を購入すると、その全額が費用計上又は取得価格の10%の税額控除ができる可能性があります。経営力向上計画は、節税だけでなく、融資や補助金を受ける際の優遇措置もありますので、申請しておくことをお勧めします。

  7. 中小企業倒産防止共済への加入(個人事業主の場合のみ)

    取引先が倒産して売掛金債権等が回収困難となったときに共済金の貸付けが受けられる制度です。この制度は、掛け金の全額が費用計上でき、加入してから40か月たてば全額が戻ってくるため、節税として使われることも多くなっています。ただし、掛け金が戻ってくる場合は利益になりますので、お金の使い道をきちんと計画しておかないと、結局節税にならなかったという事態に陥りかねませんので注意が必要です。また、医療法人は加入できませんので、法人成りを検討する場合も注意が必要です。

  8. 専従者賞与を支給する(個人事業主の場合のみ)

    専従者給与は、賞与としても支給可能です。専従者給与は職員の給与よりも高いことも多いので、職員と同率の支給でも節税効果が大きくなることが期待できます。なお、専従者給与の届出を見て、変更すべきであればすぐに変更届出書を提出しましょう。

  9. 小規模共済、国民年金基金等の加入、個人型確定拠出年金(個人事業主の場合のみ)

    小規模企業共済は、個人事業主の歯科医院が加入できる退職制度です。掛金全額が所得控除となり、税金が安くなります。優遇されている税制度なため、加入者も多く存在します。掛金の前納制度を利用すると、前納した分の掛金も所得控除の対象となります。共同経営者の要件を満たせば、専従者も加入することができます。国民年金基金は、国民年金に上乗せした年金を受け取るための公的な年金制度です。こちらも同様に、前納した金額も含めて掛金全額が所得控除となります。個人型確定拠出年金(iDeCo)は、月々の掛金を拠出(積立)して、60歳以降に年金または一時金で受け取るものです。掛金全額が所得控除となり、税金が安くなりますが、前納の制度はありません。国民年金基金とiDeCoは併用が可能ですが、両者の合計が月額68,000円が上限となります。

  10. ふるさと納税(個人事業主の場合のみ)

    ふるさと納税をすると、原則として自己負担額の2,000円を除いた全額が所得税や住民税の控除の対象となります。また、ふるさと納税をすると、自治体によってさまざまな返礼品を受け取ることができます。総務省から自治体に対し、返礼品について制限がかけられてしまいましたが、ふるさと納税をすれば、魅力的な返礼品を受けられるため、楽しみながら節税をすることができます。ただし、ふるさと納税が節税になる上限額は、その年の所得に応じて変わってきます。また、受け取った返礼品の総額が50万円超えると、税金がかかってくることにも注意が必要です。

  11. 決算賞与の支給(医療法人の場合のみ)

    予想以上の利益が見込まれるときは、予想を上回った余剰部分を、職員に決算賞与として支給することも、有効な決算対策になります。また、職員のモチベーションの向上にもプラスの効果があります。ただし、毎年あると勘違いされるとモチベーション向上にマイナスの影響もあり得ますので、きちんと説明しておく必要があります。決算賞与には、いくつか満たすべき要件がありますので、留意が必要です。

  12. 生命保険に加入する(医療法人の場合のみ)

    支払った保険料が損金に計上できる生命保険に加入します。生命保険は年払いにすると、払った時に1年分の損金を計上できます。ただし、生命保険はその種類によって税務上の取り扱いが変わってきますので、確認してから加入するようにしましょう。

  13. ふるさと納税

    ふるさと納税とは、生まれた故郷や応援したい自治体に寄付ができる制度です。一般的に自治体に寄付をした場合には、確定申告を行うことで、その寄付金額の一部が所得税及び住民税から控除されます。ふるさと納税では原則として自己負担額の2,000円を除いた全額が控除の対象となります。
    しかし、全額控除される寄付金額には、収入や家族構成等に応じて一定の上限がありますので、ご確認ください。

節税に対する考え方

節税方法の一例を記載してきましたが、留意すべきなのは、事業を経営していくうえで節税がどの程度の重要性を持っているのかを、一度きちんと確認することです。

多くの税理士事務所や会計事務所からは、確定申告や決算申告前には、節税に関する助言を受けると思います。節税も重要なことではありますが、一方で、クリニックを経営するにあたってもっと重要なこともあります。

それは、ご自身のクリニックを将来どのようなクリニックにしていきたいのか。そのためには、これからどのように経営を変えていくべきなのか、ということです。節税を重視しすぎると、どうしても視野が短期的になり、経費を使って税金を抑えよう、という考え方になってしまいます。しかし、その結果、手元資金や内部留保が薄くなり、本当にしたかった展開や、いざというときにどうしようもなくなってしまう、ということになりかねません

節税を考えるのと同時に、ぜひ長期的な視野を持って、ご自身のクリニックの将来について考える機会を持っていただきたいと思います。

ミネルバ税理士法人は、会計税務だけでなく、お客様の経営のパートナーとして、皆様のお役に立ちたいと考えています。