上田会計週報『来日5年経過後の外国人の 確定申告(租税条約がある場合)』2017.07.10
外国人も来日5年超で全世界所得課税
仕事や留学で来日し、日本が好きになったり、日本人と結婚したりして、在留期間が5年を超えて日本に住み続けている方がいます。日本の国籍を有していない外国人も、在留期間が5年を超えると、日本人と同様、全世界所得が所得税の課税対象とされます。
国外所得がある人の確定申告
国外に財産を持っていれば、その所得の発生国と日本国との両方で課税されます。
事例として、ドイツ国内に株式と賃貸用不動産を保有している場合を想定します。株式の配当があれば、配当金に対してまずドイツで課税され、その後日本でも同じ配当金に対して課税されます。不動産収入も、ドイツで課税され、日本でも課税されます。それぞれの国の税法の規定で課税されるため、課税金額は違いますが、同じ所得に対して二重に課税されます。
この二重課税部分は、日本の確定申告の際に、外国税額控除という規定で二重課税の調整が行われます。しかしながら、課税の時期や国内所得と国外所得の割合による計算の関係で、100%二重課税が調整されるわけではありません。
租税条約が適用される場合の取扱い
先日、ドイツ人の方から、「二重課税を調整する独日租税条約に、不動産所得に関する規定で、“ドイツに存在する不動産はドイツ国において租税を課することができる”と書いてあるので、日本では課税されないのではないか?」という質問を受けました。たしかに、そう書いてありますし、租税条約が源泉地国と居住地国との二重課税の排除を目的とし、一般的には源泉地国における課税の免除又は軽減を規定する場合が多いです。しかしながら、不動産所得に関しては、原則としてその不動産所在地国(ドイツ)での通常の課税方式、すなわちドイツ国内法どおりの課税を認めることとしているものであって、不動産所在地国だけに課税権を認めているものではありません。
なお、配当や利子、使用料などは、租税条約の所与の手続きを事前にすれば、国内法よりも軽減された源泉所得税を適用させることもできます。ただし、これは源泉税控除の際に軽減された税率が適用されるということであって、あくまでも申告に際しては全部を課税所得に算入し、二重課税は外国税額控除で調整されることとなります。